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ローザンヌで羽を広げるバレエダンサー

ローザンヌ国際バレエコンクール決勝 優勝は13歳でバレエを始めた ワグマンさん

観客と審査員を魅了し、1位に輝いたシェール・ワグマンさん
観客と審査員を魅了し、1位に輝いたシェール・ワグマンさん Keystone

スイス・ローザンヌで3日、第46回ローザンヌ国際バレエコンクールの決勝が行われ、カナダ・トロント出身のシェール・ワグマンさん(17)が優勝した。2位と4位が韓国、3位と5位が中国出身のダンサー。日本人は2005年以来初めて入賞には至らなかった。

 審査委員長のテッド・ブランドセン氏は、今回のコンクールを振り返り、「数年前まではレベルの高い男子ダンサーを見つけるのが難しかったが、今年のレベルはとても高い。また、女子も基礎がとても素晴らしい。とても衝撃的」と称賛した。

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ローザンヌで羽を広げるバレエダンサー

このコンテンツが公開されたのは、 10 代のバレエダンサーを取り巻く環境は、どのように変貌を遂げつつあるのだろうか?ローザンヌ国際バレエコンクールの最新情報をお届けする。

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 1位を獲得したのは、モナコのプリンセス・グレース・アカデミーに所属するカナダ人、シェール・ワグマンさん(17)。6歳からタップダンスをはじめ、ジャズやモダンといったダンスも習ったが、バレエを始めたのはほんの4年前、13歳の時だった。受賞直後には「信じられないくらい嬉しい。ここ(ローザンヌ)に来るのが夢だった」と喜びを述べた。

 ワグマンさんは、クラシック・バリエーションで、ドン・キホーテのバジルをエネルギッシュでリズミカルに踊り観客を惹きつけ、会場からも大きな拍手が沸いた。コンテンポラリーでは、ウェイン・マクレガー振付のクロマChroma(彩度)で秀でた表現力を発揮した。

 決勝の演技後、ワグマンさんは「昨日、舞台で踊るときは少し緊張したが、レッスンで注意されたピルエットを昨晩から今日にかけて猛練習し、その結果、今日は昨日よりももっと良く踊れたと思う。ただ、クラシックとコンテンポラリーで演じる役があまりにも違うので、切替えが難しく感じた」とスイスインフォに語っていた。

 審査員からは、「高い技術と芸術表現を融合できるダンサー」、「まるで真のアーティストを見つけたようだ」との声が聞かれ、芸術性、個性、技術、ダイナミックな動きの連鎖など、どの点においてもとても高く評価された。

ラ・バヤデールを踊るハナ・パークさん
ラ・バヤデールを踊るハナ・パークさん Caroline Minjolle

 2位に輝いたのは、韓国人ハナ・パークさん(15)。「基礎がしっかりし、バレリーナとしての要素を備えており、感性を含めて踊っていること」が評価されたという。審査員のオリバー・マッツ氏は「本当に素晴らしい有望なダンサー。強いて言うなら、表現力に欠けるところがあるが、まだ15歳。これから補えるものだ」と話した。

 3位に入賞したのは、中国人のウェンジン・グオさん(16)。上海ダンススクールの先生が「とても努力家」とレッテルを貼るほど稽古に熱心なダンサーだ。今回、グオさんの踊りは、特にコンテンポラリーの独自性に富む振付が審査員の目を惹いた。

 審査員の加治屋百合子さんは、「彼女はレッスンの時から、振付を自分のものにし、自分の世界を作ることができていたが、素晴らしい踊りだった」と褒め称えた。グオさんは受賞後「とても嬉しい。スカラーシップで留学して、これからももっと頑張りたい」と今後の意気込みを述べた。

prix de lausanne2018
ドン・キホーテを披露するウェンジン・グオさん Caroline Minjolle

 今回のコンクールでは、参加資格の年齢を変更し、下限を14歳6カ月に引き下げたことで、15歳以下の女子7人へ参加する道が開かれたが、決選に進出した人はいなかった。ただし、コンクール事務局は今後も参加資格を14歳6カ月~19歳未満とするという。

 また、今回、日本人は9人がコンクールに参加し、大木愛菜さん(17)と森脇崇行さん(15)が決選に進んでいたが、入賞には至らなかった。

 

入賞者

1位 WAGMAN Shale カナダ 17歳

2位 PARK Hanna 韓国 15歳

3位 GUO Wenjin 中国 16歳

4位 LEE Junsu 韓国 16歳

5位 ZHAO Xinyue 中国 17歳

6位 ARANDA MAIDANA Miguel Angel David パラグアイ 18歳

7位 GALVAO Carolyne ブラジル 17歳

8位 GELFER-MÜNDL Aviva 米国 16歳

ローザンヌ国際バレエコンクール外部リンク

正式名称はPrix de Lausanne(プリ・ド・ローザンヌ)。スイス西部のヴォー州ローザンヌで1973年から開催されている。14歳6カ月~19歳未満の若いダンサーを対象にした世界最高の国際コンクールの一つで、若いダンサーの登竜門とも言われる。
第46回コンクールは2018年1月28日から2月4日まで開催され、過去最高の380人が応募し、予選のビデオ審査を通過した74人が本選に参加した。日本人は9人が参加。決勝には日本人2人を含む21人が出場した。入賞者は、希望するバレエ学校かバレエ団で1年間研修でき、奨学金が与えられる。
審査員は9人で構成され、今回は、オランダ国立バレエ団のテッド・ブランドセン氏が審査員長を務めた。米・ヒューストンバレエ団のプリンシパル、加治屋百合子さんも審査員を務めた。
同コンクールを通して、これまで多数の日本人プロバレエダンサーが誕生し、吉田都さんや熊川哲也さん、そして昨年から英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとなった平野亮一さんや高田茜さんも入賞している。

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